花には香り 本には毒を;せどりと出版業界
(この記事には業界用語もチラホラ出てきますが、ご容赦ください)
2014年上半期の出版物売上高が、ワールドカップ2014の
ブラジル-ドイツ戦のような悲惨な事になっています。
2014年 1~6月
全体 前年比 書籍 前年比 雑誌 前年比
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8267億 -5.9% 4094億 -5.5% 4172億 -6.2%
(出典)出版科学研究所
*下記の数字も出典は同じ
この上半期の数字は、1983年と同じくらいです。
失われた30年か・・・・。
前年比-5.9%は過去最大らしいですね。
ずっとチビチビ減り続けてきたわけです。
これは、もうちょっと「ヤバイ」状況だと思います。
ピークの1996年から4割近くの売り上げ減です。
何故、持ちこたえられるのか? まあ、それまで
儲けすぎだったんですかね。
このブログは、「せどりブログ」なので、あまり出版(新刊)
業界の事を細かくは書かずにきましたが、これまでちょぼ
ちょぼ書いてきたように、最大の要因は、日本独特の
再販(再販売価格維持制)+委託制(返品自由)
が機能不全を起こしていることにあると思われます。
もちろん、本以外のメディアがどうしたとか、ネットがどうしたとか、
それこそ、ブックオフがどうしたとか、「外部要因」もあるでしょうが、
最大の問題は、「内部対策」にあるというのは、まともに見て
いればみんな分かっているはずです。
言い方を変えれば、
流通の目詰まり
です。アマゾンが伸びる要因は、もちろん「品揃え」もあるかも
しれませんが、
超一流の「流通」と「決済」のシステム
だと思います。
一昔前なら、書店に電話して取次経由で本を取寄せたら、
3週間とかかかってました。3日でも遅いのに、3週間・・・・。
アマゾンはワンクリックで当日・・・・。
「そういうシステムだから」
という以外に理由はありません。できるのにやってなかっただけです。
要するに、戦後日本の出版業界を下支えしてきた「取次」
(彼らの仕事はまさに「流通」と「決済」)が、うまく進歩、
進化できないまま、再販制に守られた業界全体がガラパゴ
ス化したのが、現状につながっているように感じます。
分かっているのに、何も手を打てないのだからどうしょう
もないでしょう。
元気な出版社の多くは、取次を使わない「直取引」だったり、
それこそ、書店すら使わない、「ネット取引だけ」のような所
もあります。旧来の取次経由でも、宝島社みたいに、「付録戦略」
でものすごい勢いの所もあります。
http://toyokeizai.net/articles/-/17463
(僕は、宝島社は付録だけじゃなく、それ以外の努力も大きいと思いま
すけど。だって、「ブランド付録」だけなら、どこでもすぐに真似できるし)
「直」なら、例えば、ミシマ社、トランスビューetc.
「ネット」だけなら、僕が勧めているこの本の版元ダイレクト出版。
ダイレクト出版なんか、いわゆる
DRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)+アフィリエイト
だけでやっているようなものだから、本当に凄いと思いますね。
これをやるためには、真の意味で「良い本」を作り続け
ないとできないわけです。でもそれをやって、大きな利益を上
げています。こういうのを「良い仕事」と言うのではないでしょうか。
でも、そういう会社に限って、「出版業界」の古い人からは
(悪意を持った言い方で)「いや~あれは出版社とは違うよ」
見たいな言われ方をするんです。
は? アホですか?
たしかに、良い意味で「古い体質を完全に無視した革命
的な売り方」という点で「旧来の出版社とは違う」かも
しれませんが、あなたが言うのは、「業界に入っていない」
というだけでしょ。
あなたが、これまでに作ってきた本全部並べても、僕には
一冊の方が上ですよ。はい。
(え?誰か想定して言っているのか? non non 一般論、一般論)
出版社の仕事って、良い意味で毒のある本を作る事でしょ?
少なくとも、慣例に従うのを第一義にして、ノルマ的に本を
作る事ではないでしょう。
再販委託制って、昔は凄く効率的だったんだろうけど、今は
「無駄だらけ」になってるんだよね。制度のメインテナンスして
こなかったのがまずかったかもしれませんね。
委託制があるから、無駄に新刊バンバン作って(せどり的には
ありがたいけど)、ガンガン返品。
毒にも薬にもならない本はいらないですよ。
「出すために出す」
「委託するために出す」
「どうせ返品されるから出す」
新刊点数の推移
1970年 19226点
1980年 27709点
1990年 38680点
2000年 67552点
2010年 74714点
2012年 78349点
売れない(売上下がる)のに新刊点数だけは増える(経費上がる)。
先日、昔は「業界を挙げて、一致団結して盛り上げる!」的なことだった
東京国際ブックフェア
がありましたが、噂では、
ダイヤモンド社、新潮社、文藝春秋、光文社、筑摩書房、中央公論新社
といった大手はもはやブース出してないらしいじゃないですか。
「国内」ブックフェアですらないですね。
この状況で、業界を回復させるためには、シュンペーターが言う所の
創造的破壊
しかないのでは?
(まあ、業界の中ででそれをやった〔やってる〕のは、アマゾンとブックオフですよね・・・。
出版社なら上記のような、目詰まり起こした出版流通を「完全無視」
してやってる会社とか)
再販制度と委託制度をゼロにする!(段階的とか言わずに)
それで、あっっったりまえだけど、新規参入者を、制度的に差別する
みたいなふっざけた形は制度的に廃止する。
同じ条件で競争させる。
え? そうですよ、委託制下では、同じように1000円の本を売っても、
古くからある岩波書店は750円入ってくるなら、新興出版社は
650円だったりしますから。
1億なら、7500万と、6500万です。
そもそも取次に口座を作る事ができない場合も多々あります。
それで、どう勝負しろと?
新陳代謝が制度的に妨げられている業界に未来はないですよ。
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では、こういった状況は、(本を中心とした)せどらーにはどうなのか?
正直、せどりには極めて好条件ばかりです。だから僕もやっているという
のもあります。
●出版点数が多い
⇒これはどうみてもせどり向きです
●新刊市場の流通が機能していない
⇒せどらーが使うのはアマゾンですからね、逆に良い状況です
●アマゾンの圧倒的な伸び方
⇒言わずもがな
まあ、新刊市場が仮に伸びていても、それがせどりに不向
きだとは思いませんが、少なくとも今の状況は「せどり向き」です。
何故なら、僕の考えでは、
【本に対する実需はそんなに減っていない】
からです。うまく売ることができていないだけです。
稼いでいるせどらーは、いわば「うまく売ることができている」という
ことです。
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本好きとしては、有名なこの言葉を書いておきます。
花には香り 本には毒を
つまらない慣れ合いで傷をなめあっているうちにこういった
状況を迎えた業界でしょうから、自業自得かもしれません。
慣れ合うなら孤独に毒のある本を読みますよ、僕は。
最後に、最近の出版業界が残した名作
(もちろん、た~~くさん良い本も出てます)、
『ギャラリー・フェイク』(文庫10巻、p232)より
「『美を知る者は孤独なり
徒党を組めばやがて慣れ合い腐りゆくまで』
今の日本人はもう少し、胸の内におのれだけの
美をもつべきじゃないですか?」
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タグ:ダイレクト出版, 現代広告の心理技術101
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