紙の出版物2015年の販売額5.3%減。減少率過去最大
2015年の紙の出版物過去最大の減少率
出版科学研究所の発表では、2015年の出版物推定販売額は、
2014年比で5.3%のマイナスの1兆5220億円となり、減少
率は調査を始めた1950年以来最大となりました。
(これは、いわゆる「新刊」の出版物の事なので、ブックオフ
せどり等で扱う「中古本」は関係ありません。むしろ追い風です)
僕はもともと出版社で編集者をしていたので、これまでも、ブログ記事で、
出版業界については何度か触れてきました。
過去記事を振り返ると、2014年末にも似たようなことを書いています。
これを読み返すと、2015年もそのまま何も変わらずジリ貧であった
ことがよく分かります。
さらに前の2014年夏には、
「2014年上半期の減少率マイナス5.9%は過去最大」
という記事を書いています(おそらく一年の減少率としては
今回の5.3%が最大という事だと思います)。
上記の記事に、出版物売上推移や、その分析が多少辛口で
書いてあります。
この記事を書いてから、1年半経っていますが、何も変える部分は
ありません。出版業界はそのまま地盤沈下が進んでいるだけです。
「過去最大の減少率」のニュースを受けて、新たに記事を書こうと
思ったのですが、上記記事を読み返したところ、その必要はありま
せんでした。あそこに書いたとおりです。
雑誌の凋落が意味する事はさらに深刻
強いて言えば、週刊誌をはじめとした雑誌の減少が顕著になってきた
事が事態をさらに深刻化させているかもしれません。
もともと、出版業界の隆盛の基盤となった、取次を使った委託・再販
機能は、(ある程度のマスを対象とした)雑誌やコミックの大量流通
がメインで、書籍はそのついでにやってもらうという位置づけでした。
そういう意味では、雑誌が凋落すると出版業界崩壊のクライマックスが
一気に来る可能性があります。
書籍はともかく、雑誌はスマホの機能ともろに被る部分があるので、
業界に内在する問題だけでなく、外在する圧倒的な黒船と戦う必要
があるので、僕は正直もう無理ではないかと思っています。
ありうるとしたら、コンテンツ制作のノウハウを持っているのだけが唯一
の救いです。そのノウハウを紙の本としてではなく、スマホに載せていく
形がありうるかもしれません。
とはいえ、テレビ局や大手出版社というのは、実はコンテンツ制作を
すでにしていないという現実があります。作っているのは、制作会社
や編集プロダクションで、テレビ局や出版社はそれを中抜きする存在
になっていると言えるでしょう。ゼネコンが下請けに丸投げするのと
ほとんど同じようなものと考えていいと思います。
そうすると、実は出版社には、魅力的な企画を立てて形にするという
もっとも根本的なスキル自体が既に失われているのではないかという、
どうにもこうにもなんともいやはやという状況さえ考えられるのです。
ああ、恐ろしい。
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や~くにたたぬとおいだされ
としよりロバがぶひひひひん
かなしいこころをかくしつつ
とほうにくれてるこまってる
(『ブレーメンの音楽隊』より)
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